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リーン・スタートアップ・コーチとは

企業から新規事業・イノベーションを産み出す「リーン・スタートアップ・コーチ」のミッションを紹介します

「リーン・スタートアップ・コーチ」とは、企業内でイノベーションを興すスペシャリストです。

ただし、彼らのミッションがみなさんの想像と異なるのは、彼らは「ビジネスモデル」の設計をメインミッションとしないということです。彼らが設計するのは、イノベーションの「種」を撒くところから、その種を発芽させ、やがて大きな収穫へとつなげる「プロセス」です。組織内の強みと弱み、そしてマーケット・ニーズやグローバル環境の変化に精通し、企業がイノベーションに向かってどのような「舵取り」をするのが最も効率的かをデザインし、そして、社内に存在する複数の事業開発チームのファシリテーターとしてサポートします。企業内にこのようなミッションを専門に担う「コーチ」を配置することによって、ビジネスモデル開発チームはマーケットニーズの探索からビジネスモデル設計、そしてフィードバック分析に集中的に向き合うことが出来るようになり、リーン・スタートアップが飛躍的に加速するのです。

システム開発などの「プロジェクト」を成功させるには、実際にシステム開発を行うエンジニアやステークホルダーを統括する「プロジェクト・マネージャー」の存在がとても重要です。アジャイル開発では、成果物に責任を負うプロダクトオーナーや実際に開発を行うアジャイルチームをサポートする「スクラム・マスター」の存在が欠かせません。スポーツの世界では、アスリートの潜在能力を引き出せるかどうかは、コーチのスキルに大きく依存しています。

これらと同様に、世界的な環境変化や競合の動向、ステークホルダーの意向などを全体的に捉え、いわゆる「全体最適化」された戦略を策定するポジションの存在はとても重要です。企業内の新規事業開発とイノベーションに「継続性」と「再現性」をもたらすためには、優れたビジネスモデルを産み出す「マネジメント・システム(リーン・プロセス)」と、チャレンジを後押しする「ファシリテーター」の存在が必要なのです。

リーン・スタートアップ・コーチのスキルセット

誰でもリーン・スタートアップ・コーチとしてベストパフォーマンスを発揮できるよう、5つのハンドブックを用意しました。新規事業開発・イノベーションを実現するための知識体系を豊富な事例を交えて解説しています。 社内独自のリーンプロセス設計時にも、実際に事業開発チームがビジネスモデル設計を進める際にも、5つの領域をカバーするこのハンドブックが必ず役に立つはずです。

リーン・スタートアップ・コーチの最も「コア」なミッションであるプロセス設計の基本知識と活用事例をまとめたハンドブックです。個人の能力ではなく、組織・チームの能力を向上させる「プロセス」には、数々の「法則」が存在します。ゴールまで到達するための阻害要因と促進要因の理解を通じ、目的・目標まで最小限のコストと最短ルートで到達するための「ムダ」を産まないプロセス設計手法を学びます。

イノベーションというハードミッションを実現するには、社内外のステークホルダーと事業開発メンバー、そして何よりも対象とする課題当事者・マーケットの全員が共感できる「ベクトル(方向性)」をまず最初に設計し、そのゴールイメージを詳細化していくのが効果的です。刻々と変化する社内外の情報から、目指すべき未来設計と運用手法を学びます。

座学で得た知識と実際の行動の間には大きなギャップがあります。まして、当人ではないステークホルダーや課題当事者を、自主的な活動に促すのは至難の業です。優れたビジョンやプロセスを実現するためには、より多くの賛同が必要なのです。コーチが関わるすべてのステークホルダーの積極性を引き出す効果的な手法を学びます。

企業が必要とするイノベーションとは、必ずしも、社会が要求する課題解決に応えるという単純な図式には当てはまりません。企業・経営者・所有者が考える社会的価値や理念を背景に、いつ、どのような形で実現するかを、社会の要求と企業の現状を加味した上で、多方面と「合意形成」を重ねて具現化していくものなのです。ビジョン・コンセプト設計とプロセスコントロールを円滑に進めるための、効果的な合意形成手法を学びます。

新規事業開発・イノベーション開発の実践は「判断と決断」の連続です。ビジネスモデルは企業が目指すべきビジョンに近づいているのか、プロセスはリーンであり続けているのか、そしてチームは適切な学習を重ねているのか、常に的確に判断する必要に迫られているのです。これを正確に行う最も重要な要素は「正しく測定する」ことです。誤ったデータ・情報からは、誤った判断しか生まれないのです。リーン・シンキングの最重要スキルである、メトリクス設計を学びます。

コーチ育成からイノベーションまでのステップ

新規事業開発・イノベーションに先立って、コーチの育成、そしてプロセス設計を行うのは、一見すると遠回りのように感じるかもしれません。しかし、いきなりMVPを創って仮説検証を行うという一般的なリーン・スタートアップは誰でも簡単に出来るものではありません。見よう見まねのフィードバックループをいつ終わるとも分からないまま長期間に渡って進展なく過ごすより、指導者たるコーチの支援のもとで実践するほうが、最終的には最短ルートになるのです。

リーン・スタートアップ・コーチの育成および認定は、体系化されたカリキュラムによる研修の受講と、受講後に実施する理解度確認のためのワーク・レポート作成により客観的に判断されます。社内で新規事業・イノベーションを託すことが出来る人材には、新規事業開発という過酷な環境下でも決して揺らぐことがない知識体系・状況判断と、企業及び社会に対する積極的な取り組みが要求されるのです。

リーン・スタートアップ黎明期から企業への導入を支援してきた"Lean Startup Japan"の経験と実績に裏付けられた、極めて再現性の高い育成プログラムをぜひ体験して下さい。

プログラムの詳細は下記ボタンよりご確認下さい。

Q&A

  • 1.「リーン・スタートアップS級コーチ」は正式な資格ですか?

    いえ、資格・試験ではなく、あくまで研修プログラムの名称で、一般的な経歴として通用するような「認証」は行っておりません。
    しかし、プログラムでは知識体系の受講にあたり、内容理解の確認テストを行います。この結果は企業内の研修開催部門にも共有するため、社内で誰がこのプログラムを受講し、どのような理解を示したかについては、記録として残るように設計しています。ただプログラム受講して終了するのではなく、どれぐらい「リーン」の本質を理解しているのかの判定までがプログラムに含まれています。企業内に同じ知識背景を持ったコーチが多数存在する状態は、新規事業開発にとっては理想的な環境に近づきますので、新規事業開発に適した人材の評価指標としてお役立て下さい。

  • 2.タイトルには「S級」とありますが、S級以外にもレベルがあるのでしょうか?

    いえ、優秀なコーチをイメージして「S級」と名付けましたが、それ以外のレベルはなく、プログラムは1種類です。
    「S級コーチ」というネーミングはサッカーの指導者ライセンス制度に由来しており、ワールドカップなどに出場する日本代表チームの監督になるためには、日本サッカー協会による「S級コーチ」の認定資格が必要なため、国を代表するような指導者・支援者という意味を込めて「リーン・スタートアップ・S級コーチ」と名付けました。
    サッカーではD級からS級までのレベルがあり、各階級によって監督に就任できる就任できるチームが異なります。エントリー資格であるC・D級で指導できるのはキッズチームのみです。さらに、たとえ引退した有名な選手であっても、監督・コーチになる際には、研修を受けて「指導者としての正しい知識」を学ばなければなりません。選手という「財産・才能」を預かるには「我流の指導」をさせないという方針なのです。
    一般的に、どのような分野でも国際競争力を高めるには、指導者・支援者側のレベルアップがまず最初に必要とされていて、サッカーなどのスポーツに限らず、例えば教育などの分野でも、教師の指導レベルが向上すれば、それにつられて学生の学力も向上します。新規事業開発も、これらと同様に、正しい知識をもった指導者・支援者によるリーダーシップが必要でし。新規事業開発・イノベーションとは単なる「ビジネス設計・アイディア勝負」ではありません。企業内のリソース(人材・資産・ブランドその他)を適切に投資するという「企業経営」の一部です。よって、企業内の新規事業開発を適切で、かつチャレンジングな未来に導くには、経営の正しい知識が必要なのです。

  • 3.受講対象は誰ですか?

    企業にお勤めで、基本的には、現在、自社で新規事業開発やイノベーションを担当される部門を主な対象としています。しかし、将来的にミッションとなる予定の方や、間接的に事業開発に携わる部門の方に受講いただいても効果があるよう、プログラムは設計してありますので、幅広い方に受講頂ければより効果は期待できます。
    ちなみに、役職や在籍年数などは一切問いません。

  • 5.コーチなしでもアイディアが優れていればイノベーションは興せるのでは?

    はい、もちろん可能だと思います。

    現実にも、例えばスティーブ・ジョブズのように、画期的なアイディアの持ち主であり、かつ実現までの強力な推進力を持っていれば、確かにコーチという存在は必要ないかもしれません。
    しかしながら多くの企業にはスティーブ・ジョブズは存在せず、アイディアが本当に画期的かどうかも分かりません。逆に言えば、リーン・スタートアップ・コーチは、ひとりの天才の能力を「組織的なアプローチ」によって、継続的かつ再現性をもって実現するアプローチだと考えていただくのが良いと思います。

  • 6.では逆に、社内にリーン・スタートアップ・コーチを配置しないデメリットはありますか?

    はい。残念ながらあると思います。
    新たなビジネスを設計して、収益・利益として成果を残すことと、長期的な視点で、継続的かつ再現性を持った事業開発能力(プロセス)を備えるということは根本的に異なる課題解決です。当然ながら、コーチを配置しない組織では、たまたま新しいビジネスが成功しても、それによってプロセスが確立することはありません。

    弊社がご一緒させて頂いた企業で、プロセス設計とビジネスモデル設計を分離できず、期待しない結果に至ってしまったケースをご紹介します。

    1)アイディアマンに依存したケース
    ある企業のアイディアマンが温めていたビジネスが軌道に乗り、社内外で高い評価を得ました。これにより当人は社内の事業開発に関する権限を与えられますが、成功した事例はあくまで「属人的」なノウハウであったため、部下であるメンバーから同じパフォーマンスが発揮されることはありません。やがてご本人は転職または起業にいたり、社内に事業開発のノウハウが残ることはありませんでした。

    2)エンジニアによる、見よう見まねのリーン・スタートアップ実践
    ある企業では、市販の書籍などを参考に、ビジネスモデル開発をリーン・スタートアップで進めようとしました。プログラマを中心にMVP開発を重視し、ドキュメント作成をスキップして社内では画期的なスピードでサービスがリリースすることはできたのですが、残念ながら、業績は一向に上向く気配はありません。アクセス解析、A/Bテスト、インタビューなど、書籍などで得られる手段はすべて講じても打開策は見えず、打ち手を失います。やがてリーン・スタートアップの進め方に限界を迎え、最終的には「もともとのアイディアがそこまで良くなかった」との判断により、失敗の本当の原因が分析されることなく、プログラマ主導によるリーン・スタートアップの実践に幕を閉じました。この企業の事業開発が、MVPもリリースできない企画マン主導へ戻ったのは言うまでもありません。

    3)オープンイノベーションへの挑戦
    ある企業では、プロセスの重要性は理解しつつも、優れたアイディアがあればより成功すぐ可能性は高くなるという思いから、社内外からビジネスモデルを募集しました。予想以上に多数のアイディアが寄せられましたが、どのアイディアを採択すればいいのかも、採択後にどのような支援を行えばよいのかもわかりません。リーン・スタートアップを進めるたびに発生する問題を解決するノウハウは持ち合わせていなかったのです。最終的には、アイディアを採択された側から自分たちでは継続不可能との申し出が相次ぎ、コンテスト開催部門が巻き取る形で終了しました。

    4)プロセス設計の重要性を理解できない企業にて
    弊社がご一緒したクライアント側ご担当者の多くが、リーン・スタートアップアプローチの効果は、短期的な業績ではなく、長期的なプロセス改善および再設計によって現れることを理解されました。しかしながら、マイルストーン毎のリーン・スタートアップの進捗を、新規ビジネスの売上やユーザ数の推移で評価され、やがて、業務時間のほとんどを、プロセス設計の重要性の説明資料作成に占められるようになります。こうした状態が恒常的に継続すると、最終的には自社でのリーン・スタートアップ実践は実現不可能と判断し、最後は転職もしくは自身で起業して社を離れる決意を固めます。本来、最も必要とする人材が、その必要性を理解する企業へと流出したのです。

    いずれのケースでも共通するのは、新たなビジネスモデルによる「売上」という実績を優先することによって、プロセスという長期的な課題解決手段を失っているということです。弊社では、このふたつの課題を明確に分離するためにも、社内にリーン・スタートアップ・コーチを配置することを推奨しているのです。

  • 7.コーチの育成からどれぐらいで成果を得ることができますか?

    「成果」という言葉が「新規事業の業績」を意味する場合、育成開始から少なくとも3年前後はかかると考えて頂いたほうが良いかと思います。実はリーン・スタートアップやアジャイル開発といった「プロセス・アプローチ」では、組織にプロセスが定着してから「タイムラグ」を経て、実際のビジネスや成果物に結果が現れ始めます。取り組み開始からしばらくの間はプロセス設計に専念することが、結果的には近道になるのです。
    弊社では、短期的に新規事業の業績が必要な企業様には、事業開発経験が豊富な人材を外部から採用してチームを組むか、すでにある程度まで成長しているベンチャー・ビジネスを買収して育てていくことを推奨しています。短期課題の解決と長期課題の解決は、混同せずに並行して進めるのが得策です。

  • 8.リーン・スタートアップ・コーチ導入というアプローチはどのように見出されたのですか?

    リーン・スタートアップ、アジャイル開発、デザイン思考など、旧世代の常識を覆す新しいアプローチが本当に効果を発揮するようになるためには、ただ理論が目新しいだけでは実現しません。これらを実践した組織やチームの「その後」までをトラッキングし、成否を分ける様々な要因を「ベスト・プラクティス」として共有することで、初めて本当に画期的なアプローチとして確立するのです。リーン・スタートアップ・コーチという存在の必要性は、弊社が創業以来積み重ねてきた数々のコンサルティング経験と、リーンの導入に成功した企業の独自のアプローチ(の観察)から誕生しました。プロセス設計とビジネスモデル設計は、同じ人物に同時に要求するのではなく、それぞれにプロフェッショナルとなる人材を配置し、両者は互いに連携させるというのが、最もリーンの効果が得られたのです。
    詳細な理論は研修の中でご紹介しますが、プロセス設計とビジネスモデル設計は、根本的に異なる課題解決であることをご理解下さい。

  • 9.個人でも受講できますか?

    現時点では個人受講は予定していませんが、知識体系講座とケーススタディの学習をオープン講座として開設する準備を進めています。準備が整い次第お知らせしますので、受講希望がありましたら「お問い合わせ」よりご希望をお伝え下さい。準備が整い次第、連絡いたします。

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